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「ケガ。大丈夫ですか?」 アクアブルーの長い髪を風に遊ばせ、少女はすっと手を伸ばす。その指先がまっすぐに自分に向かって伸ばされるものだから、ロビンは内心焦りを覚えていた。治癒のためであるということはもちろん承知している。このメンバーで旅をするようになってから、ケガやちょっとした体調不良の治癒は、自然、水のエナジーを先天的に持つメアリィの役目になっていた。今までにもこういう状況は何度もあった。しかしこの状況――言ってしまえば船室で二人きりの、このとんでもないシチュエーション――は、如何せんまずいだろう。更にまずいことに、一度意識してしまったので鼓動が早くなっている。なんてことだ。 身体中の熱が頬に集中して、全身が脈打つような錯覚にさえ陥る。それなのにメアリィは、あろうことかその柔らかな手でふうわりと額に触れ、軽く撫でてくる。そのちいさな動作にさえ全神経を集中させてしまう自分がいることを彼女はわかっているのだろうか。その感覚はどこか不快でどこか心地良く、心臓がまるで警鐘のように煩く脈打つ。聞こえてしまわないだろうか。 「動かないでください。今プライを…」 「…大丈夫だよ。自分で治せるから」 「ダメですわ。ほら、じっとしてください」 言いながら、彼女は目を閉じて指先を額の傷に掲げる。短い祈りの口上の後、青い光が掌を包み、清浄なオーラが傷口を撫でていく。あたたかな気の流れ。思わず目を閉じ、その力に身を委ねてしまいたくなるような心地良さ。同じ水のエナジストであるピカードの、同じエナジーでさえメアリィと同等の力は出せやしないだろう。それはきっと、先天的だとかそういうものではなく。 (ああ、そうか) 喋り方も、声も、たったひとつの仕草を取っても、彼女という存在そのものが既に「癒し」の力を持っているのではないだろうか。そうでなければ、彼女の声を聞くだけですべてが洗われていく感覚の説明がつかない。もしかしたら天使ってのも噂じゃないのかもしれない。 (つまり俺は、メアリィのそういうところに惹かれたわけか) 傍でサポートしてくれる安心感。彼女の持つ雰囲気。手の柔らかさ。その全てに、まるで引力に従うかのように。 「はい、終わりましたわ」 メアリィの澄んだ声に、はっと現実に引き戻された。 ――ちょっと待て今俺はなんてことを考えてたんだ? 慌てて霞がかる意識を戻し、今思ったことを反芻する。いやいや馬鹿な。だってメアリィは仲間で。イミルで会ってから今日この日までずっと共に旅をしてきた大切な仲間で。ジェラルドやイワン、それにガルシアたちだって彼女と同じ位置にいるはずだ。だけど何かが違う気がする。些細なことだけれど、決定的に違う何かが。 「どうしました?まさかまだ他にケガを…?」 「あ?…い、いや別になんでもない」 思い悩むうちにまた妙な気分になる。随分落ち着いていた鼓動も自分の役目を思い出したかのように煩く活動しはじめた。ぎゅうぎゅうと心のどこかが締めつけられるような感覚さえしてきて、眩暈がする。メアリィはまだ不安そうにこちらを見ている。そういえば外は妙に静かだ。船の見張りの交代は。(まだ、だったはず)ジェラルドがいつものように不躾に扉を開けないだろうか。(扉は沈黙を守り続けている)まるで誰かによって故意に作られたかのような状況で、 この狭い船室には、相変わらず二人しかいない。 黄金の太陽 || ロビン→メアリィ マイナー上等!大好きだ! |