死を飼いならす
例えば聖母の許に現れたガブリエルのように、僕の許に現れたのがあの少年だったとしたならば、さしずめあの時の署名は受諾の証とでもいったところだろうか。僕はそうと知らず、僕の身の内に宿したものを生み出すための準備を着々と進めていたのだ。騙されていたことを加味したとしても、元凶は10年前にこうして身の内に『死』を宿した僕に他ならない。僕は世界中の人々に等しく死を与える異形のものを大切に育んでいたのだ。
ああ。仲間の誰かが聞いたら怪訝な顔をするかもしれない。怒る者もいるだろう。だけど僕にとって、僕の身の内にあって10年間そうと知らずに大切に育んできた『死』は、慈しみ愛すべき存在になっているんだ。できるならば、両腕で抱きしめてあげたい。その腕の中で、苦しまないように、一思いに最期を迎えさせたいと願っている。それは僕の意思など関係なしに、魂が叫ぶ歪な願いだ。目を逸らすことは許されない。
うつくしいこどもにくちづけを
(070319)